「属州総督」世界の宇宙戦闘

 宇宙戦闘用の艦艇は当初「戦艦」しか存在していなかった。
 巨大な艦体に強力な武装と防御システムを搭載した「戦艦」は同レベルの「戦艦」以外では対抗不可能であった。
 武装宇宙艦は他には偵察を任務とする小型の「偵察艦」が存在するだけであった。
 
 「戦艦」はどんどん巨大に進化していったが、巨大になりすぎた「戦艦」は近距離での機動性が弱点となっていた。
 ある会戦で戦艦並みの近距離兵装を施した小型艦多数の突撃によって「戦艦」が撃沈されるという事件が発生した。これによりその弱点が明らかとなった。
 その会戦では単独行動中の「戦艦」を奇襲したことが勝因であったのだが、それまでの「戦艦」を撃沈しうるのは、「戦艦」のみとの常識を覆したことは事実であった。
 この重武装の軽艦艇は「雷撃艦」と呼ばれ、安価なこともあり各国は大量に配備することとなった。しかし、この「雷撃艦」は超光速機関も持たない純粋な防衛兵器であった。

 「戦艦」を撃沈しうる軽艦艇「雷撃艦」から「戦艦」を守るため、これら「雷撃艦」を駆逐する艦艇、「駆逐艦」が登場した。「雷撃艦」を撃破するに足る近距離火力と超光速機関を有した「駆逐艦」は、その後「雷撃艦」並みの近距離火力を得ることなり「雷撃艦」自体に取って代わるかと思われた。

 ここで登場したのが、「航宙母艦」である。
 「航宙母艦」は超光速機関を持たない「雷撃艦」を戦場まで運ぶことが出来た。
 こうして「雷撃艦」の最大の弱点はカバーされ、「雷撃艦」は現在も重要な戦力と見なされているのである。

 「戦艦」は強力ではあったが、非常に高価であった。そのため各国とも十分な数を得ることは出来なかった。その上数少ない「戦艦」は敵の「戦艦」に対抗することが目的であり、他の任務に振り向ける余裕は無かった。他の任務、すなわち戦略的な偵察や通商破壊、拠点防御、砲艦外交のための戦力プレゼンス等には、当初は「偵察艦」が当たっていたが、余りにも小型で航続距離も短かったため、満足な成果を挙げることができなかった。
 そこで考えられたのが、中型の戦闘艦であった。「巡航艦」である。
 「巡航艦」は戦闘力を重視して設計されてはいなかった。軽艦艇を撃退するに十分な程度の武装があれば良いとされた。それよりも重視されたのが、宇宙船としての航宙能力であった。本格的な戦闘となれば「戦艦」を出せば良いのである。
 「偵察艦」より強く、「戦艦」より安価な「巡航艦」は手頃な準主力艦として整備されていったが、裏を返せば「偵察艦」より高価で「戦艦」より弱い中途半端な戦闘艦でもあった。
 そして、拠点防御用の「雷撃艦」が登場し、「巡航艦」は「戦艦」の護衛任務にも就くこととなった。しかし「巡航艦」は護衛任務に就けるには、高価過ぎたし、数も揃わなかった。なにより「雷撃艦」のてごろな標的とされて戦闘での被害が続出した。そのため、「戦艦」の護衛任務専用の戦闘艦「駆逐艦」が登場する。
 この「偵察艦」よりも重武装の「駆逐艦」の出現によって「巡航艦」に変化が生じた。「巡航艦」よりも小型の「駆逐艦」が同等の火力を有したのである。勿論そこには無理があり、「巡航艦」ほどの航宙能力はありはしなかったが、超光速機関は搭載していたのである。そして数が多い。「巡航艦」が「駆逐艦」に遭遇することは十分に考えられたし、そこでの戦闘で相打ちや返り討ちとなる可能性は否定できなかった。こうして「巡航艦」も重武装の道を歩むこととなる。「巡航艦」の戦艦化であった。
 この他に「巡航艦」の生き残り策として特殊化に進んだものもあった。元々「巡航艦」は航宙能力を重視して無理のない設計がされている。そこに無理をさせることにより、通常では考えられないような極端な装備を施したのである。これらは「特殊巡航艦」と呼ばれ、実験艦が何隻も建造された。それらは自らの特性に合った状況では絶大な効果を挙げたが、それを外れた状況では全く無価値であった。そのため建造数は少数に止まっている。
 

 この世界での艦隊戦闘はまず遊撃艦隊の前哨戦から始まる。
 恒星間の深淵を越える侵攻艦隊は膨大な補給が必要であった。当然、防衛艦隊はその補給を妨害すべく主力とは別の遊撃部隊を送り込んでくることが予想される。それに対抗するために侵攻艦隊も同様に別働隊を編成し、主力の決戦の前に別働隊同士の戦いが行われるのである。
 勿論、遊撃隊を編成すると言うことは決戦兵力が減少することであり、これを嫌い、正々堂々と主力の艦隊決戦で勝敗を決する場合もある。また、遊撃隊を編成させると侵攻艦隊に思わせて置いて実は主力に戦力を集中させ、相手の戦力を分散させることを狙うこともあった。尤も、これを行うには、詳細な敵情を得ている必要があり、この面で「偵察艦」の役割が大であった。

 前哨戦が終了すると主力の決戦である。尤も、侵攻艦隊の補給が断たれていたりすると、侵攻を諦めて撤退することもあり得るが。

 戦闘は敵味方の艦隊が高速で接近、射程に入ると同時に射撃を開始する。そのため、遠距離射撃は射程の長い重火器から順次効果を挙げることとなる。
 両艦隊は高速で接近し、遠距離射撃の応酬をしつつ、近距離兵器の射程に入る。そうなると遠距離射撃用に調整されている兵器は命中を期待できなくなり、代わって近距離用の兵器が射撃を開始する。近距離兵器は遠距離兵器と異なり、射程の有利不利は無いため、素早い照準が可能な軽火器から順に射撃を行うこととなる。
 戦闘は通常は一航過で終了する。高速で擦れ違うため、減速、反転に時間がかかるため不利な側はその間に撤退してしまうためである。稀に両者とも戦意が十分であれば反転して再度戦闘に入ることもある。

 艦艇の武装は前方にしか指向されていない。巨大な遠距離兵器を可動搭載することは効率が悪いからである。可動装備した1門に対して固定装備なら複数門の搭載が可能なのである。そのため、艦隊戦に於いて同航戦や追撃戦は基本的に発生しない。
 
 

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