競争試作 デザイナーズノート
 

【ご挨拶】
 「建艦競争」に続いて、2度目のGJ付録ゲームに登場です。風間祐一です。
 今回もデザイナーズノートの原稿依頼を受けましたので、カードゲーム「競争試作」のあれこれについて思いつくままに書いてみたいと思います。

【着想】
 このゲームの元々のテーマは随分昔から考えてはいました。ただし、戦闘機ではありません。モビルスーツです(笑)。ガンダムのモビルスーツの開発ゲームをカードゲームでできないかなと思っていたのです。
#ボードゲームでは、アクシズUC0079の改造ゲームで実現していたのですが、このゲームはプレイタイム12時間以上とビッグ過ぎて気軽にできるものではなかったものですから(笑)。
 しかし、そのようなカードゲームは今現在存在しないことからも分かる通りうまくいかなかったのです。
 それで、何故、戦闘機の「競争試作」になったかと言いますと、前作の「建艦競争」が好評だったからです。「建艦競争」は今まで私のカードゲームをプレイしなかった人にも好評だったのが嬉しくて、ミリタリーもののカードゲームにしようと思い立ったのです。これが動機付けですね。
 システムの着想はズバリ飛燕と五式戦です。エンジンをすげ替えることによって同じ飛行機(細部は違ってますが(笑))が別の飛行機になるというのは、面白いと思ったのです。それでエンジンと機体を別のカードにして組み合わせるというシステムを作り上げました。
 ただ単に開発するだけでは、面白くない。やっぱり兵器を作る以上はその力を発揮する場を作らなくては!と言うわけで、「競争試作」の最終選考を空中戦で解決するものとしたのです。そのため、開発する飛行機は戦闘機一本に絞り込みました。これはゲームの簡略化に大きく貢献した決断でした。それにあまり欲張りすぎるとロクなゲームにならないというのが経験上分かってましたし(笑)。
 これだけでゲームの骨子は揃ったのですが、もう少し盛り上げたいという意識が働きました。「建艦競争」の世界大戦のようなものですね。これはそのまま導入するには、ちょっと無理があるので、敵を設定し、戦局レベルの概念を導入しました。制空権の有無は戦局に直結しますし、制空権は制空戦闘機の性能が大きくものを言いますから、これはうまくいったと思います。
 後は、イベントカードを考えて、いろんな装備品をカード化して完成でした。

【戦闘システム】
 機体の性能はスピード、マヌーバ、火力、防御力、航続力で表されます。これは私なりの空中戦のイメージから構築した戦闘システムに必要な要素でした。
 私なりのイメージというのは、まず高速戦闘機が有利というものです。しかし、巴戦もおろそかにしたくない。火力のでかい飛行機、撃たれ弱い飛行機の違いを出したい。足の短い飛行機は役に立たない。ということで決まっています。
 空中戦のシステムを解説すると、スピードの速い高速機は先にスピード対抗があるため先制する可能性が高い上に、マヌーバ戦で負けても振り切れる可能性があるため非常に有利になっています。
 しかし初期には、マヌーバ性能の高い戦闘機が各国で採用されていたことを考慮して、絶対的なスピードが低い機体はスピード差が多少あっても差ほど有利ではなくしました。それがスピード対抗後のスピードチェックです。
 撃墜チェックについては当初、何も考えず、以前のカードゲーム(Mobile Suits Wars)で使用していた簡単なものをそのまま使っていたのですが、大火力機や重防御機があまりにも有利だったので、少し変更を加えました。
#特に大火力で重防御の機体は敵機ばかりでプレイヤーの作る戦闘機が歯が立たないことが多かったものですから(笑)。
 それがクリティカルとファンブルを大幅に増やすことでした。空中戦はどんなに大火力でも弾が当たらないことは多いですし、飛行機というものは、ちょっとしたバランスの崩れで墜落するものです。ということで、クリティカルは1/6、ファンブルは1/3程度としたのです。それでもやはり大火力や重防御の機体は強いですね。
 航続力の処理は敵機との戦い、つまり実戦でしか適用しないこととしました。おかげでプレイヤーから軽視されること軽視されること(笑)。その場にいなければ、戦うことすらできないのですから最も重要な能力であるとも言えるのですが、正式採用にはほとんど関係ないためどうしても軽視されますね。中には、航続力を気合いの問題と豪語するプレイヤーもいますし(笑)。

【性能】
 機体やエンジンのレーティングはめちゃくちゃいい加減です。デザイナー本人が言うのだから間違いない!
#威張ってどうする(笑)。
 機体性能の内、スピード、火力、航続力は怪しげながらも性能を自分ながらの基準にあわせて決定しましたので、一応根拠はあります。しかし、マヌーバと防御力についてはなんの根拠もありません(笑)。
 日本の戦闘機はマヌーバは高いだろうとか、アメリカの戦闘機は防御が強いだろうとかいい加減なイメージで決めています。私も何か拠り所が欲しいのですが、なかなか良い資料がなく、例えば、マヌーバを決めるために翼面加重とか計算しても見たのですが、どうもイメージと合わなくて使えませんでした(笑)。
 ですから、これは変だとか思いましたら、性能レーティングは変更して下さっても結構です。ゲームバランスには多分影響しないと思います。私もゲームバランスを考えてレーティング付けてません(笑)。
根拠のあるレーティングなら私が教えていただきたいぐらいです(笑)。
 スピードのレーティングは400キロ台が0、500キロ前後が1、520キロぐらいが2、550キロで3、570キロぐらいで4、600キロ寸前が5、600キロを越えると6、700キロを越えると7、700キロ後半が8、800キロを越えると9、10以上は1000キロといったところです。
#だったと思うな(笑)、良く覚えてません。
 こういうレーティングですので、レシプロ機の最高速度は8との制限を付けてあるのです。
 火力は7.7mm程度の機関銃は0.5、12.7mm〜20mmクラスで2、30mm以上は3として合計し、最高値を9になるように調整しました。だいたい目安として7.7mmクラス2丁の96艦戦とかで1、20mm2門程度の標準的な機体で3程度になります。それもこれもブローニング8丁なんぞという化け物じみた火力のサンダーボルトのせいです(笑)。米軍のブローニング機銃が非常に優秀なので、これを6丁搭載が標準の米軍機は火力7が標準という化け物揃いになってしまいました。
 航続力はだいたい200キロで1として計算しています。航続距離が1200キロあれば、とりあえず合格という配慮からです。航続力チェックの関係上6以上あれば十分ですから。それ以上は丼勘定で決めてあります(笑)。
 さて、エンジンの性能です。勿論基本的には、馬力です。しかし馬力だけで決めてしまうと、液冷エンジン搭載機の高速性能を表現できません。そこでエンジンのサイズという概念を導入してレーティングを決めています。このサイズというのは、空気抵抗に対するサイズですね。
 当初はエンジン性能は馬力とサイズの2つで行う予定でした。しかしソロプレイをやってみたところ、自分でもいい加減嫌になるぐらい計算が面倒になってしまったので、やめました(笑)。そこで一本化したわけです。ところがエンジンの馬力は簡単に分かるのですが、サイズが分からない。これもいい加減に決めてあります。誉は小さいとか火星は大きいとか、金星は並とかで決めてあります。私の偏見で米軍のエンジンはみんなデカイと思っています。米軍のエンジン性能が思いの外低いのはそのためです。
 液冷エンジンは全て最小として評価しています。
 エンジンの評価で本来ならば、信頼性を入れるべきなのですが、これこそよく分からないので、基本的にエンジンは回るものとしてデザインしてあります。おかげで誉の優秀なこと、優秀なこと(笑)。
#でもその分誉搭載機の性能が悪化してしまいました。
 ただ一つの例外がセイバーエンジンです。余りにも評判の悪いエンジンですし、第2世代の2000馬力級液冷エンジンは余りにも強力すぎるので、あのような面白いエンジンにしてあります。
#私はこのエンジン大好きです(爆)。

【敵機】
 敵機についてです。
 敵機が米軍機ばかりなのは、特に意図してのことではありません。単に私がこいつは敵だよな。と思った機体を集めたら米軍機ばかりになってしまったと言うことです。やはり私も日本人ですから(笑)。
 しかし、レーティングしていて思いましたが、米軍機は本当に強いですね。高速、大火力、重防御と3拍子揃っていて、これは確かにかないませんわ(笑)。プレイヤーが手にできる最優秀機の一つがムスタングですしね。ただし、ムスタングは総合性能では最優秀でも、突出した性能はないため、余程優秀なエンジンを積まないと採用を勝ち取れないところが辛いですね。
 敵機の内ザラマンダーが異彩を放っていますが、これは敵機にジェット機を入れたかったからです。ミーティアだけでは寂しいですからね。それにプレイヤーがメッサーシュミットを作れる以上、ハインケルは敵でしょう(爆)
#史実で戦闘機を作りたかったハインケル社はメッサーシュミットの政治力に負けて爆撃機しか作らせて貰えず、ハインケルはメッサーシュミットを随分恨んでいたそうです。
 最後の敵機は最初、ロッキードのP80シューティングスターにしようとしていました。しかし、このゲームでは、ジェット機というのは、あまり特徴がないため、3機続くのは、今ひとつかと思いなおしました。
 そこで他に最後の敵機にふさわしい機体はないかと目を付けたのがベアキャットでした。史上最強のレシプロ艦上戦闘機と呼ばれながら実戦を経験することなく退役した戦闘機です。高速、大火力、重防御に加えて運動性も高いという欠点のない戦闘機です。ただし、特に突出した性能はないため、高速性能に特化した戦闘機をプレイヤーが作っているとあっさり負けてしまいますけどね。
#尤も、ベアキャットが戦うことは少ないですが。その前に戦争が終わっていることも多いですからね(笑)。

【解説について】
 カードに書いてある機体やエンジンの解説はどうしたのかとよく質問されるのですが、一応、全部自分で考えて書いてます。良く知らないものについては、参考資料ほぼ引き写しですけど。ですから、解説に間違いがありましたら、全ては私の責任です。
 参考資料というか、ネタ本は光栄の戦闘機本、グランプリ出版のエンジン本と飛行機メカニズム辞典です。このうち、光栄の本は結構いい加減な資料で後にリサーチミスがかなり見つかりました(笑)。それでも、これ一冊でとりあえず、賄えたので重宝はしましたね。
 グランプリ出版の方は不満を言えば、きりがないですが、これらの本がなければ、このゲームの完成はなかったわけで、非常に重要な資料でした。ただし、特にエンジン本の方は、読んで面白い本ではないですし、資料的にもデータ的なものはあまり詳しくないので、他人にお薦めはしかねます。ただ類似本を私は知らないため本当に重宝させていただきました。

【姉妹ゲーム】
 「競争試作」の基本システムは思いの外に汎用性が高く、いくつかシステムを流用したゲームが既に存在します。
 私自身が作成したのは、「戦車狂想曲」です。名前の通り、戦闘機ではなく、戦車を開発するゲームです。戦車と主砲を組み合わせ、戦車の砲塔のサイズ以上の主砲を載せようとすると、駆逐戦車になって機動力も落ちるというゲームです。
 「競争試作」との相違点はプレイヤーの立場が国内メーカーではなく、国際的な兵器商であり、納入先も中小国と設定としたことです。そのためコストの概念を導入し、代わりに世代の縛りを削りました。実戦も戦局レベルという概念ではなく、自社製品を売り込むために、他社の戦車の納入先で紛争を起こして(笑)戦うというものです。
 その他に「F1カードゲーム」があります。「競争試作」システムと呼ぶには、随分違うのですが、デザイナーの方が、「競争試作」に触発されて作成されたと言っていますので、挙げておきます。
 このゲームはプレイヤーはF1チームを率いてコンストラクターズポイントを稼ぐゲームで、カードは、チーム、車体、エンジン、タイヤ、特殊装備、ドライバーと多彩でこれらを組み合わせて自分のチームを作り上げるのです。これは良いゲームで、GJでスポーツゲーム特集とかが組まれることがあったら付録に推薦してしまいますね(笑)。
 つい最近も駆逐艦に武装を施して開発するゲームを作成された方がいました。タイトルは仮名で「DD競作」だそうです。システムは「競争試作」そのものでした。
 後、京都の某氏の元で、人格プログラムとアンドロイドを組み合わせて究極のメイドロボを作るゲームも計画されています(爆)。

【最後に】
 「競争試作」をGJ付録にして貰えるとは思いませんでした。ネックはイラストです。「建艦競争」の時も戦艦の線画描きで地獄を見たようですし、もう懲りたろうと思っていたのです。特に私の方も”「競争試作」をGJに付けるのなら、エンジンも線画にしてね(にっこり)”と無理難題言っていましたし(笑)。
#実際のカードがどうなるのか、私も知らないので、楽しみです。ちなみに、私自身が作ったカードはGJ63号の予告ページに載っていたものです。

 以上、長々とおつきあいいただき、ありがとうございました。
 

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